そう言って、慌ただしく玄関を出る。

遅刻するわけでもないけど走る。

よくあるシチュエーション。

あの角を…。

なんて考えて、走ってると

ドンッ

本当に起こってしまった。

私の…妄想が。

現実にっ!

「ご、ごごめんなさい!!」

妄想してたのはいいものの、実際起こるとどうしたらいいかとか、全くわからない。

「いえ。こちらこそ。
怪我、ありませんか?」

その男の子は、真面目系の爽やかメガネ男子。

私が思うに、メガネ外せば…

だめだめ!

「はいっ!ないです」

そう言って、伸ばされた手を掴む。

「あれ…

篠宮高等学校ですか?」

彼と私の制服は似ているような作りだった

たぶん、一緒の高校かな


「篠宮高等学校ですよ?

制服…同じですね」

なんか…敬語のやり取りって…なんかおかしい。

「どうせなら、一緒に登校しません?」

そう彼が言って来た。

「えっ
あっの…。はっ!はい!是非!」

妄想をふくらませていた私は、何の返事を返せばいいのか分からなかったはずなのに、勝手に口が動いていた。

まぁ、勝手に口が動いていた。なんて絶対ありえないけど。

「僕は、山崎晴人
好きに呼んでください。

あっ…“さん”付はやめてください。」

「は、はい。

えと、私の名前は…」

「七瀬愛莉さんですよね?」

私が言う前に、山崎君がそういった。

なぜわかる?

「名札に…」

「あー」

小学生の頃いつも忘れていたから、くせがついてたんだよね。

恥ずかしいな。

「夜は外した方が身の安全かと」

そうおすすめしてくれたけど

私はそんなの、気にしていなかった。