映画のことを話すと紫音は〝頑張ってね〟と言ってくれた
この言葉が嬉しいはずなのになんか俺の中でモヤモヤしていた
寂しくねーのかよ、とか
俺のこと芸能人としてしか見てないんじゃないのかとか
なんで俺がそばにいないのにそんな元気そうなんだよとか
俺、彼氏だよな?って不安になるなんて本当に女々しいのかもしれない
俺は紫音の応援の言葉に素っ気なく頷いてしまった
なんだよ俺…ほんとガキみてーだ
紫音はそんな俺を心配してか〝大丈夫〟だともう一度念押しした
その言葉がより一層俺のモヤモヤを増やしていく
その時
「ごめん!レジでトラブって…」
電話越しに男の声が聞こえた
「あ、ごめん!友達来たから切るね!」
は…誰だよ?
紫音は俺がそう聞く前にすぐに電話を切ってしまった
〝ごめん〟ってなに?
変な意味は無いのは自分でもわかっていたがなんとなくイラついた
そいつとら謝るようなことでもしてんのかよ
紫音が俺がいなくてもさびしくなさそうなのはかそいつのおかげ?
お前のそばに誰か他の奴がいてくれてるからなのか?
だとしたら俺はもう…
俺は機械音だけが残るケータイを思いっきり握りしめた
あの日から何週間か経った
私は流羽に連絡できないでいた
自分から連絡しないと流羽とは繋がっていられないって分かってるのに
「はぁ…」
ここ最近はため息ばっかりついてる気がする
自分がこんなに弱い人間だって流羽と恋するまで知らなかったよ
私は重い足取りでバイトに向かった
あの日、陸斗の手を振り払って逃げてしまったけど
陸斗はあれからあえて何も私に聞いてこない
それよりもなんだか前よりも優しくなった気がする
ちょっかいとかは最近出してこないし…
「うぅ…」
バイトに着くなりいきなり商品を運ぶのを任されたけど
…重すぎ!!
もう店長ってば、私のこと女扱いしないから困る
確かに怪力かもしれないけどさすがに重いよっ!!
私はフラフラした足取りで荷物を運んでいると
いきなりふっと軽くなった
「無理すんな。俺が半分持つから」
軽くなったのは陸斗が持ってくれたからだった
「あ…ありがと。」
陸斗は少し優しく笑ってそのまま先を歩いた
半分とか言ってほぼ持ってくれてるじゃん…
前とは違って優しい陸斗に少し戸惑ってしまう
最近いつもこの感じ
何かと助けてくれるたびにどうしたらいいか分からなくなる
なんか少し調子狂っちゃうんだよね
告白されたってこともあって、やっぱり今までとは違う空気が私と陸斗には流れていた
バイトが終わってケータイを開くとラインが入っていた
そこには〝流羽〟の表示
「えっ!?」
私は連絡が来たことに驚いてケータイを落としてしまった
もうあっちから連絡なんて来ないと思ってたのに
私が呆然としている時
「ほら、落としてんぞ」
陸斗が運悪くケータイを拾ってくれた
陸斗はケータイに表示された〝流羽〟の文字を見て一瞬苦しそうな顔をした
「彼氏か?よかったな」
陸斗の少し悲しそうな顔をなんとなく直視できなかった
そんな顔をさせてるのは私のせいだよね
告白の返事もまだしてないし…
私は俯いたまま何も言えなかった
陸斗は少し息を吐いて私の頭をポンと叩いた
「じゃあな、おつかれ」
そして、そのまま近くにあったテーブルに何か置いて帰ってしまった