初心者・未経験者歓迎、とチラシには書かれているが、それでも勇気がいる。そもそも知り合いなんて茶道部にいないし……。
……と思っていたが、それはどうやら違ったらしい。
「京介じゃん! お茶会に来たの? どうぞ!」
中から受付をしていた浴衣姿の女子生徒が出てきた。
今は違うクラスだが、小学校・中学校と同じ学校だった女の子だ。
いつもは短めの茶色い髪をハーフアップにしていて、明るく活発な印象があったのだが、今日は綺麗に結い上げてかんざしまで挿している。ちょっと可愛く見えた。
「ど、どうぞって言われても……僕は、作法とか全ッ然知らないんだけど?」
女子生徒はそれでも笑顔でセミナーの玄関に押し入れる。
「だいじょーぶっ! それに次のお茶会のお点前さんはすっごい美人だし、味も天下一品のお抹茶を出してくれるんだから! 行かなきゃソンソン!」
「美人ー?」
「保証するよ! 利香ちゃんは茶道部一の美人だし、和服姿は校内一だよ!」
「利香、ちゃん……? んー、まあそこまで言うなら?」
茶道部一の美人・和服姿という単語に釣られたわけではないが、空腹も限界だったことだし、やはりお言葉に甘えてお茶会に出席することにした。
「それでは百円をお願いします!」
「はいはい」
受付の簡易テーブルに戻ると切符と空いた手のひらが突き出された。
僕はポケットからがま口財布を取り出し、百円玉一枚を切符と引き換えて和室に向かった。