お茶碗を畳の上に戻してから彼女の正面を向いた。
「僕は昨日、初めて抹茶を飲んだんです。もちろん、お菓子の抹茶味、みたいのだったら今までに食べたことはあったけど……本物の抹茶を飲んだのは昨日が初めてで。それなのにあなたが――利香さんの抹茶は苦くなかった」
すっと息を吸い込んで、もう一度口内で香るお茶の風味を味わった。
「利香さんの抹茶は、美味しくて、安心させられて、気持ちが穏やかになる――そういう抹茶を点てられるあなたが、素敵です」
顔が真っ赤になっていくのが分かる。
僕自身も、目の前で瞳が潤んでいる利香さんも。
「僕は昨日、あなたが――利香さんがお茶を点てる姿を見て、一目惚れしました。そして今日、あなたに助けられて、お菓子を頂いたりお茶を点ててくださったり、作法も教えてくれて……。そして確信しました」
「あなたのことが、好きです。……利香さん」