「水野、授業はいいの?」



紺野は水野を見下ろしながら、何事もなかったかのように問う。








「オマっ…はぁ。逆にオレが聞きてぇんだけど。」






紺野があまりにも普通に問いかけてきたので、水野は驚き溜め息をつく。




そして、"とりあえず座れば?"と自分の隣を指差す。








その仕草を見て、紺野はゆっくりと水野の隣に体育座りをする。



「僕は別に出席日数が足りないわけでもないし、単位が危ないわけでもないから。」








「ふ~ん…。って、違ぇよっ!!何で死のうとしてたのか聞いてんだよっ!!」




紺野の答えが思っていたのと違っていたので、思わず声を荒げてしまう水野。






その声に少し驚き、紺野が"あぁ…"と思い出したように言う。






「さっきのは、別に死のうとしてたわけじゃないよ。何となく上ってみただけ。」






そう言う紺野の瞳は、どこか哀しく遠くを…ずっと遠くを見ているようだった。








そんな紺野の横顔を見て、水野は落ち着いた声で言う。









「そんな風には見えなかったけど。」









「…もしそうだったとしても、水野には関係ないだろ?僕たちは友達じゃない。ただのクラスメイトだろ?」



水野の言葉に、紺野は少しだけ怒りを含みながら言う。









「……だな。じゃあ、オレ教室に帰るわ。またな、ただのクラスメイトの紺野くん。」




水野は紺野の言葉を聞き、少し寂しそうな顔をした後、言葉に棘を残す。



そして立ち上がり、制服のズボンのポケットに両手を収め、扉へと向かって歩き出す。