ため息とともに、キャプテンの顔が元に戻った。

「100年?
 もうそんなに経つのか?」

「・・・ああ」

「王女も王子も皆、死んだ。
 こんなはずではなかったのにな……」

「・・・ザワージュ号は、砂漠をさすらう幽霊船になった」

「な……に……?」

「・・・知らなかったのか?」

「ああ。まさかそんなことが……」

「・・・防ぎようのない事故だったと聞いている。
 ・・・一説には砂漠の国の攻撃によるものだったとも。
 ・・・それでも貴方は王子と王女を死なせた責任を追及された」

「処刑されかけて砂漠へ逃げた。
 逃げて逃げて逃げ続け……
 そのまま死んでいたのか……
 気づかなかった……
 まさか100年も経っていたとはな……」

「・・・俺は貴方のニオイをたどってここに来た。
 ・・・貴方から漂う、海のニオイ。
 ・・・潮のニオイと腐った魚のニオイが混ざったような。
 ・・・このニオイが通り過ぎた後、オアシスに幽霊船が現れる」

「ザワージュ号が、わしについてきているというのか?」

「・・・そう。
 ・・・そしてオアシスの真水が海水になり、魚は死に、作物も枯れる」