✗突然来た【沙那】

ーー何の前触れもなく、アイツは来た。

誰もが嘘だと嘲笑うだろうが、私は今までに泣いたことがない。
いや、それだと語弊があるかもしれない。
私の記憶には泣いたということはないのだ。私が小学二年生の頃に、喜怒哀楽という、人間らしい感情は捨て去った。
ドラマでも漫画でも、人が死ぬと何故か皆泣く。それが本当に理解が出来ない。
何故自分が死んだこともないのに可哀想だの何だの言えるのだ。

だから、私はいつもニコニコ笑っている自分とは正反対なアイツが嫌い、、いや、
苦手なのだ。
まだ、転校してきて二日しか経っていないのに、もうクラスの中心にいる。