「…わかったから、手、離して」



「うん…」




いつもより低い声に怯えながらもそっと手を離して、私のほうへ体を向ける翔くんを見つめる。


ドキドキしすぎてきちんとしゃべれなさそうだからいったん深呼吸して




「翔くん、好きです」




翔くんの目を見て、震えそうになる声を必死に隠して言った。




「…俺、佐々木さんのこと…」



「待って。…まだ、話は終わってないよ」




翔くんが“きらい”という言葉を言う前に止める。


ちゃんと話して、それで翔くんの答えを待ちたいの。




「…翔くん、あ、芳川くんか」



「…どっちでもいいよ」



「覚えてる?…芳川くんが私に告白してきた日のこと」




あの日も今日のようによく晴れた日の放課後だったね。



そう…あのときも翔くんが忘れものを取りに来ていたの。