「...い...!めい!」

ん...

声が、する...

聞きなれたこの声は...

ガチャ!

「めい!いつまでも寝てないの!いいかげん起きなさい!今日から学校なのよ!?」

そう言いながら、勢いよく私の部屋に入ってくるお母さん。
ったく、春休みぐらいゆっくり寝させてほしい。
...ん?
今、『今日から学校』って...?

「あ!やっば!!!」

そうだ!
今日から新学期。
中学2年生になるんだ!
時計を見ると...7時42分。
8時までに学校につかないといけないから...
かなり絶望的だ...
まぁ、そんなこと考えてても仕方ない!
できるだけ早く準備しなくちゃ!
そう思い、お母さんがいるのも気にせず、服を脱ぎ始める。
紺のセーラー服に、赤のスカーフ。
かわいいわけではないが、ダサいわけでもないうちの学校の制服を着て、靴下を履く。
そして荷物を持って階段をダッシュで降りて、洗面所へ。
顔を洗い、歯ブラシに歯磨き粉をつけ、口へ。
歯を磨き終わると、キッチンへ。
パンを手に取り、何も塗らずに頬張る。

「行ってきまーす!」

と、まだ2階にいるであろうお母さんに言って、ダッシュで学校を目指す。

私の家から学校までは、走れば5分ほどの距離。
急いでいたから時計を見るのを忘れてた...
きっと間に合う、がんばれ自分!

学校に近づいてくるにつれて、私と同じように走っている人がちらほら見えてくる。
お?これは、もしかして間に合う?
でも、油断はできない。
とにかく、ダッシュ!!

校門をやっと通過すると、すぐに校舎の時計を見る。
7時58分...
え、私ってすごくない?
起きてから15分くらいで学校に来れた!

そんなことを考えながら、ひとりでニヤニヤしていると、上から声がした。

「めいー!おっそいよー!またあたしと同じクラスだからねー!2の3だよ、走ってこい!!」

そう言って手を振る、親友の里谷結愛。
ま、また走るのか...
そう思ったが、結愛に手を振り返し、走り出す。
2年の教室は3階だ。
今の私には、それがキツくてキツくて仕方なかったが、また結愛と同じクラスなのが嬉しくて、なんとか頑張って走りきった。

...さて、教室はもう目の前。
ドアへ手を伸ばす。
すると、触れる前にドアが開いたのだ。
目の前には、私より15センチは身長が高い男の子。
焦げ茶色の髪の毛に、焼けた肌。
こういうのを、イケメンって言うんだろうな...
ぽーっと、無意識に見とれてしまった。
「あっ!...っと、ごめん。ぶつかるとこだった」
そう言ってどこかに行ってしまった。

まだぽーっとしている私に気づいたのか、結愛がこちらに来た。
手を私の目の前でヒラヒラさせて、
「めいー?どうしたの?」
と心配そうな顔。
「顔、赤いよ?」
と言って、私の頬に手をあてる。
「あ...大丈夫、なんでもない」
そう言って、自分の席を探す。
『菅野』と『里谷』だから、また結愛と近いのかな。
そうだといいな。