「銀くんそんな簡単に言わないでよー」
「でもっスよ?南乗さん。
そのババアの妄想は壊せるし、瑠璃は家出しないし、俺たちは安心できる、皆得ですよ」
唖然と銀を見つめる。
始めに口を開いたのは、冷静だった紬だった。
「…銀、お前黒いな」
「え?何がっスか?」
天然で腹黒とかたち悪い……と抹李がいうのが聞こえる。
南乗ははっ!と我に返り、紬に目線を向ける。
「紬くん、いい?」
「ああ。そのほうが助かる」
連れていってやるから拗ねるのやめろ、と言うと、瑠璃は腕を紬の首の後ろに回して、全身で張り付いた。
それを見て和兎が口を開く。
「瑠璃、小学生だと思われてたね」
皆の視線が瑠璃に集まる。
「めくると同じくらいかわいいからな」
抹李がうんうんと頷く。
それに眞瀬がツッコミをいれる。
「抹李って、ロリコンなの?」
「俺はショタコンだ」
めくるは、ばっ!と瑠璃を隠す。
「ちょ、めくる?!なにかくしてんだよ!」
「瑠璃に手出したら紬お兄ちゃんに再起不能にしてもらうから!僕も口きかないから!」
「ちょ、出さない出さない!そんな警戒すんなぁーー!!!!」
応接室は笑いで包まれた。
紬は、片手で瑠璃を抱きながら片手で香取愛美のプロフィールを見た。
それを見た南乗が紬を見る。
「紬くん、心配?」
何が、それは、瑠璃や復讐のことでだろう。
紬は南乗をちらりと見ると、口を開いた。
「…いや、それより、香取愛美ってどっかで聞いたことあるような気がする……」
「気のせいじゃないの?」
「いや……」
眉間に皺を寄せる紬の眉間を小さな手で撫でながら、瑠璃は首を傾げた。
「…つむぎの…せふれ」
「……ああ。それだ」
以前(半年くらい前)、紬が前髪をあげさせられた(眞瀬とめくるが悪のりした)時に逆ナンされ、ラブホに直進したのだ。
何故か知っていた瑠璃の記憶力は恐るべしことだろう。