no side
「なんなの!?あのババア!!ホントむかつく!!」
依頼人、香取愛美が去った後、白い扉から大きな音をたてて眞瀬が飛び出してきた。
盗聴器と監視カメラが隠れているこの部屋。
それを奥の部屋で見ていた眞瀬、抹李、和兎、夜兎、銀、めくるの六人は応接室へと入ってきた。
ちなみに、このビルの至るところに監視カメラと盗聴器があるため、依頼人がくるとすぐ分かる。
「仮にも依頼人なんだから、ババアなんていっちゃだめだよ」
「仮にもって、中々酷いな南乗さん」
抹李がずばっと突っ込む。
ふらふらと立っていた瑠璃は、ひょこひょこと紬のところまでいった。
そして、紬の長い足をガジガジとかじりはじめる。
相変わらず、無表情で。
「瑠璃、拗ねんな」
「(ガジガジガジ)」
話は全く聞かない。
普通の人は、瑠璃をみて拗ねてるなんて思わないが、ここの人間は大抵分かる。
それでも分からないときはあるが、紬が全てを分かるので大丈夫だろう。
「拗ねたくもなるよね瑠璃!
瑠璃の紬を見てあのババア…あ、まちがった。あの依頼人、
私と紬さんが恋人になったらどうしよう!きゃあー!なんて妄想してたよ!?」
「瑠璃の紬じゃないんじゃない?」
「紬の瑠璃だよな」
「双子喧(やかま)しい!!」
ヒステリックに叫ぶ眞瀬に双子がツッコミ、抹李と銀は傍観している。
めくるはひょこひょこ紬によってきて、未だにガジガジしている瑠璃に目線を合わせる。
「でも、困ったね。これじゃあ瑠璃、前みたいに家出しちゃうよ?」
「だよね。紬くん、どうする?」
めくると南乗に視線を向けられた紬は、瑠璃に、足を噛むな歯が痛むだろ。とツッコミながら抱き上げ、二人を見た。
「…どうするか」
次は首筋に頭をぐりぐりしてきた瑠璃の頭を撫でながら紬は思案する。
「連れてけばいいんじゃないっスか?」
キョトン、と言ってくる銀に、皆顔を見合わせる。