吉田 沙絢。15歳。
今日から南高校1年生。
今日は入学式。
ワクワクしながら、家を出て最寄駅まで歩く。
「沙絢おはよう。」
駅でわたしを待っていた彼は、彼氏の稲田 遥希。
「あ、遥希。おはよう!」
わたしも笑って返す。
付き合って2ヶ月のわたしたち。ちなみにわたしは遥希が初恋。幸せいっぱいだった。
2人は同じ電車に乗る。
遥希は東高校だから、学校は違うけど登下校の電車は一緒。
「今日から高校生なんだな。」
「そうだねぇ〜。遥希は高校でも野球続けるの?」
遥希は小学生のころからずっと野球をしていて、地区選抜にも選ばれるほど上手だった。
「おう。そのつもり。だから、あんま会えないかもだけど…」
「いいよ!わたしは野球やってる遥希が好きだから」
ほんとうに心からそう思っていた。
野球やってる遥希はめちゃめちゃかっこよくて、クールで顔もいいし背も高いから中学の時は後輩とかにキャーキャー言われちゃうタイプで。
わたしはそれを見て、ヤキモチ妬いて不機嫌になっちゃうんだけど、いつも優しく『俺は沙絢が1番だよ』って笑顔で慰めてくれた。
わたしはそんな遥希が大好きだった。
「そっか!ありがとう。」
わたしは笑顔を返した。
『まもなく〜 ○○〜〜 ○○〜〜』
わたしたちの降りる駅。
「沙絢、降りるぞ。」
遥希がさりげなく左手を出す。
わたしは無言でその左手を右手で握る。
照れくさくてニヤニヤしちゃう。
駅を出たらそれぞれの高校は反対方向。
「気を付けて行けよ〜。じゃあな。」
「遥希もね!ばいばい!」
わたしたちはそれぞれの高校に向かって歩き始めた。