主宰者の人がお母さんの女優時代の役者仲間で、幼い頃習い事の代わりとしてそこに所属させられていた。

だけど、あまりにも稽古が厳しくてもう帰るって泣いて困らせていた。

その時によくお世話になっていたのが、1つ年上のあすみちゃんだった。

わたしは小学校に上がるのと同時に劇団を辞めたけれど、あすみちゃんはまだ続けていたんだな。

そう思っていたら、
「これ、どうする?」

お母さんが聞いてきた。

「どうせ会うこともないと思うから…」

わたしは呟くように答えた。

「そうね、美咲も芸能人になる気はないみたいだしね」

お母さんはそう言って、名刺をビリビリに破った。

「私としてはその方がいいんだけどね。

美咲が芸能界に興味がなくてホッとしているわ」

お母さんはフフッと笑った。