「年齢のこと考えたら、さっきのヤツの方がいいと思うぞ」

ほら、最低なことを言った。

これじゃあ、別れてくださいと言っているようなものだ。

「でもわたしが好きなのは、先生だけです。

先生しか、見えないんです」

荻原が僕を見つめると、すぐに唇を動かした。

そのセリフに、僕の心臓がドキッと鳴ってしまった。

一体どこでそのセリフを覚えたんだよ。

「まあ、いい…。

それよりも、午後の授業が始まるぞ?

早く昼飯食えよ」

「あっ、いけない!」

荻原は思い出したと言う顔をすると、小走りで僕の前から立ち去った。

彼女の後ろ姿を見送りながら
「“先生しか見えない”、か…」

僕は先ほど言った荻原のセリフを呟いた。

何してんだ、生徒相手に。

教師が、生徒にドキドキしてどうする。