名前は…誰だったっけか?

僕が担任をしている9組では見ない顔だから、他のクラスの生徒であることは間違いなかった。

そう思っていたら、2人の間に沈黙が流れていることに気づいた。

その沈黙を破るように、僕は咳払いをした。

僕の咳払いに驚いたと言うように、2人が僕に視線を向けた。

荻原が気まずそうな顔をしたのと同時に、彼はさらに顔を真っ赤にさせた。

僕は何事もなかったと言うような顔をすると、通り過ぎた。

…僕は一体、何をしたかったんだ?

告白されている相手が荻原だと知ったとたん、僕は何をしたんだ?

ただ見ていただけで、やったことと言えば咳払いだけじゃないか。

そう思っていたら、僕の後ろから荻原が追ってきていたことに気づいた。

「待ってください」

そう声をかけてきた荻原に、
「何?」

僕は歩きながら答えた。