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1週間、毎日の残業で、ようやく初めての企画書を作り終えることができた。
「やったぁ‼」
プリントアウトした出来たてほやほやの企画書をぎゅっと抱きしめると
後ろから聞こえてくる拍手。
「やったね、結花さんおめでとう‼」
「だから‼なんであなたがいるんですかっ⁉」
「えっ⁉駄目なの?」
結局、なぜかこの1週間
社長は当たり前のようにうちの会社に来て主任のディスクに座っていた。
「颯太もようやく、結花さんに甘えられるね」
「そう…ですね」
満面の笑顔でそんな事を言われてしまったら…
颯太を思ってるのが…
私以外にもいる。幸せを感じてしまうじゃないっ…。
時計をみると、まだ保育園にいる間に颯太を迎えに行ける‼
急いで実家の母に連絡をいれて
帰り支度をしていると…
一瞬、目の前が暗くなって、机にもたれ掛かった。
「結花さん?」
今のが…眩暈なのだろうか。
鼓動が早くなって
息苦しささえ感じる。
「結花さん?…大丈夫?」
社長の声が段々…
遠くに聞こえて
目の前がまた
暗くなる。
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冷たい感触が額にあたる。
遠くで颯太の声も聞こえた気がして目が覚めると
私は自分の部屋のベッドにいた。
さっきまで会社にいたはずなのに…。
体の怠さが抜けなくて、やっとの思いでゆっくり体を起こすのと同時に部屋のドアが開いて颯太が顔を見せた。
「あっ‼ママ起きたっ‼」
「颯太…?」
あれ。
私…
颯太をいつ、お迎えに行ったっけ?
「おじちゃん!ママ、起きたよ‼」
…
おじちゃんっ⁈
おじちゃんってまさか…っっ‼
社長っ!
「起きたかー、良かった。」
リビングの方から聞こえた社長の声に驚いて、慌ててもう一度ベッドの中に潜りこむ。
なぜ、そうしたのか、わからないけれど、そうせずにはいられなかった。