ガタッ
楼が椅子を引いて横に座った
それと同時に更に強くなった
羨望と嫉妬の眼差し
それに気付いているのかいないのか
楼は耳元で「よろしくね、桜ちゃん」と囁いた
『……よ、ろしく……』
耳を傾けて漸く
楼が聞こえるほどの小さな声で
私もそう返した
楼は嬉しそうにニコニコと笑った
一緒のクラスなのは嬉しいけど
これからの学校生活がちょっと心配なんだよ...
その日は休み時間の度に
楼に人がたくさん集まってきていて
時々...というか結構な頻度で
私の机の位置をずらされてイライラが募るばかりだった
授業中にも殺意のようなものをあちこちから感じるし
本当に散々な一日だ
゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚
次の日、学校へ行き
靴箱を開けてみると……
『...ぇ……』
思わず小さな声が漏れた
靴箱の中には
物がぎっちり詰められている、一つの封筒があった
あまりにも詰め込み過ぎていて
封筒の四隅に穴が開いてしまっている
そこから中身が少し覗いていて
どうやらそれは
この封筒とセットで売られている
便箋の束のようだった
教室の自分の席に着いてから
封を開けた
中の文章に目を通すと
“ 如月くんに近づかないで ”
“ 楼は渡さない ”
“ 楼君の目が腐るから楼君の前から消えて ”
“ ロウは私達の物よ ”
そんなような言葉が
様々な筆跡で何十枚も綴られていた
“ 渡さない ”って...
“ 私達の物 ”って……
人を物みたいに言わないでよ
“ 前から消えて ”って言われても
隣の席なんだからそれは不可能
そんな事を思いながら
深い溜め息を吐き
封筒ごとゴミ箱へ放り投げた
この量からして
きっと、昨日のうちに
ファンクラブでも発足されたんだろう
...ねちねちとそう書かれるなら
できる限り楼と関わらなければいいんでしょ?
その時、隣の机が微かに動いたのが見えた
「おはよう、桜ちゃん」
見なくても分かる
紛れもない楼の声
運の悪いことに
私達の机の近くに女子が数人いて
「え!? “ 桜ちゃん ”!?」
「何あいつ。 如月くんと仲がいい所見せつけでもしてるの?」
悪意を感じるように
少し大きめの声で言われる悪口
私はそれを気にも留めない素振りで
楼の挨拶も無視をした