「でも僕は幸せだよ


たとえ血が繋がっていなくとも

お父さんとお母さんは

僕を愛してくれているからね

それだけで十分だよ」

そして再び彼は笑った


本当に、幸せそうに




驚いた

辛い過去を持つ彼でも

こんなに幸せそうに笑えるのかと



そして強く思った




彼のように笑えるようになりたいと
『……すごく...幸せそう……』


「うん、言っただろう?

僕は今幸せだよ...すごくね」


私もあなたのように笑いたい


『生きていれば……

そんな風に笑えるようになる……?」


「そうだよ………きっとね

それが君にとっての生きる意味であり、

生きる希望かな?」
その問いに

私は迷うことなく答えた







『─────うん!』
私の返事に

それは嬉しそうに笑った彼


…………

そういえば


『ねぇ』


「ん?」


声をかけるとこちらを向いた彼に

私は気になっていた事を聞いてみた
『どうして私を見つけられたの?』


ここは屋上といっても

大抵の生徒が出入りする表門側ではなく

殆ど使われない裏門側


それなのに目の前の彼は

どうして私を見つける事ができたのだろう
「あぁ、まだ言っていなかったね

僕は明日からこの学校に通う事になる...

言わば〝転校生〟なんだ


今日は校長先生へ挨拶をしに来てね

表門で、皆が学校から出ようとしてる中で

一人だけその流れに逆らっていたら不自然でしょう?


それに今の時間は表門側に日が差すから

日が当たっていない裏門側から出入りしたんだ
一度間を置いてから

彼は更に続けた


「挨拶が終わって裏門から出ようとしたらね、

少しだけある日向に屋上の影が映っていたんだ

そこに人影が見えたから、

〝おかしいな〟って思って振り仰いだら、

そこに君がいた


フェンスを越えようとしているところだったから、

慌てて階段を駆け上がってここまで来たってわけ」
『……そう』


「ははっ、なんか素っ気ないね」


私の聞き終わった後の反応に

彼はそう言って苦笑した


素っ気ない、か……

感情があんまり表に出なくなってしまった

でも本当はあなたにすごく感謝してるよ


私を見つけてくれて、ありがとう