私のそのたった一言を聞いて

彼はとても嬉しそうに笑った


高校生のはずなのに

笑うと少し幼く見える顔だと思った
『……それで

あなたは……誰なの?』


さっきもしたこの質問

すると今度はすぐに答えてくれた


「僕は如月…………如月楼」


一度言葉に詰まった彼

その時の彼の一瞬見せた表情を

私は見逃さなかった




『なんで……


悲しそうな顔をするの……?』

彼が一瞬見せた表情


それはとても苦しそうで、悲しそうで

そしてどこかで

救いを求めているようだった
一瞬驚いた表情をした彼は

ふっと儚げに笑うと言った


「ばれちゃってたか



……僕の話を、聞いてくれるかい?」

『うん…』


ゴクリと固唾を呑む


「あ、その前に‥‥」
一度言葉を止めた彼

「悪いけど、日陰へ移動してもいいかな?

僕は普通の人より肌が弱くてね」

『うん』

見ると、彼の言う通り

彼の肌が赤くなってきていた

二人で日陰の場所に腰掛ける


そして彼は語り始めた
─────‥‥‥‥

まず、僕のこの容姿を見て

不思議に思っただろう?


僕はね

“ アルビノ ”というメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある人間なんだ

アルビニズムとも言うけど

知っているかな?
主な原因は

色素(メラニン)を合成するための

チロジナーゼという酵素の働きが弱いから


そして一般的には

成長してもほとんど色素が出てこない

症状が強いタイプが多い、チロジナーゼ陰性型と


成長に伴いある程度は色素が出てくる

症状が弱いタイプが多い、チロジナーゼ陽性型

に分類される
僕はチロジナーゼ陽性型の方の

OCA1B、というもの


たぶん生まれた時は白金の髪に赤目だったんだ

両親はそんな僕を見て

とても気味が悪かったんだと思う

だから生まれて一週間くらい経つ頃に

僕を施設の前に置いていった


“ 名前は楼です ”と書かれた紙を添えて……
死なないように

一週間だけでも育ててくれたことには感謝していた

でも、僕を捨てたのに

どうして名前を付けたんだろうと思った


子どもを捨てるから

せめてもの報いに、とか思ったのかな?

って考えてた