ルイ「ド派手なコールで頼む」
え???ド派手なコール?
3分程たって、店内全フロアーが暗くなりド派手な音楽が鳴り響く。
ボリュームの大きなマイクからこぼれるエコーを切った張り上げた声が聞こえる。
何言ってるのかサッパリわからないが、とりあえず、何か始まる。
向こう側に居るホストが立ち上がり、次々とルイとボクの卓に集まってくる。
山の様に卓を覆い被さるその人間の壁。
まる椅子の上に立つ者、ココに30人くらい集まるホスト達。
マイクはどうやら4人が持っている。
メイ代表、専務、常務、部長がすぐ目の前を陣取る。
この日生で初めて見たシャンパンコール。
テレビの中とは全然違う迫力。
激しい音と本物のホスト達のパフォーマンス。
この時その中心に居た、ボクとルイ。
ボクは正直震えていた。
その時、ボクの右に座っていたえみちゃんが肩をポンポンとした。
振り向くとほっぺたに人差し指をつんっとする。
思わず二人で笑った。
左に座るあづさちゃんも笑ってた。
ん?ルイ、なんで代表睨んでるんだ?
この時ボクはまだルイがどんな気持ちで今日という締日を迎え、この日がどういう意味を持っている日かを知らなかったんだ。
それなのに、ボクには優しくしてくれたルイ。
きっとまだボクのことなんて眼中になかったのだろう。
今のルイの目は今日出勤してきたそれと同じ目だ。
それなのにボクは今のこの瞬間をただ、嬉しく思ったんだ。
このボクの初指名、初ドンペリ、初シャンパンコールを皮切りに本物のホスト達の壮絶な戦いが始まることも知らずに。
メイ代表を睨むルイ。
ルイの方などちっとも見向きもせずボクの方を見て祝福してくれるお兄ちゃんのようなメイ代表。
二人はどうしてそんなに対比した存在なの?
それなのにどうしてそんなに似ている一部があるの?
二人ともなぜたまに淋しそうな表情をしているの?
なぜ作り笑いをするの?
ホストだから?
それとも、それがホストの宿命だから?
ボクにはまだわからないよ。
この日二人がボクを祝福してくれてた瞳は、
絶対に嘘偽りのない純粋なモノにボクには見えてたんだよ。