結論から言うと、ボクは結局この日、若菜サンから本指名を頂くコトは出来ない。

というより、強がるわけではないが、そうする必要もないと思ったからだ。

今日は今日で、明日は明日。

必ずこの子はボクを指名してまたボクに会いに来てくれる。

そう確信していたのだ。

それはなぜか?

説明の仕様がないが、あえて言うならば彼女の目がそうだと言っていたからだ。

これはヒトとヒトの話である。

故に当人同士でなければわからないコトが世の中に沢山存在しているというコトだ。

恋人達はいつも幸せそうだ。

しかし、本当のところなんて誰にもわからない。

誰かが歌っているこの歌詞のように。

若菜サン、彼女はわずか5ヶ月程ボク指名でお店に通っては想像を絶する大金を落としてくれて、その後すぐ結婚をしてボクと縁はなくなる。













「メイ代表すみませんでした」

「何言ってんの?別に謝るコトじゃないさ」

「だってボク。。。」

「あはは、蓮クンはベストを尽くして彼女を笑わせてたじゃないか」

「いや、ボクは、ただ、、、」

「そう、それだよ。それが蓮クンの力なのさ。ただ、お客様を今日楽しませたかったんでしょ?」

「はい、そうです」

「だったらキミは何も悪いコトなんてしてないんだから謝る必要なんてないんだよ、あはは」

「メイ代表だったら、もし彼女がメイ代表しか見ていなかったらどうなってましたか?」

「あはは、難しい質問だね。でもやっぱりボクなら今日のうちに本指名を入れさせていたと思うよ?勿論入れさせる自信があるからね。どんなやり方をしてでも。ただ、あの子が蓮クンを選んだ以上は蓮クンのやり方が正しいというコトなんだよ」

「ボクのやり方、ですか」

「あはは、ボクはね、結果的に蓮クンにとって有益で、そしてお店にとって有益であれば、どのプレイヤーのやり方にも善悪はないと思っているんだよ。そしてそのプレイヤーの代表としてボクが居るだけだから。もし、お店を傷付けるようなコトや他のプレイヤーを傷付けるようなコトをされたらボクは鬼にならなきゃいけないんだけどね、あはは」

「あのヒト、また来てくれるとボクは信じてます」

「おいおい、蓮クン。重たい重たい、あはは。その心配はしてないよ、だって彼女、帰り際にボクとすれ違う時に彼女の名刺をボクにくれたんだ。アナタの所、可愛いホストが居るわねってさ。ほら、これ。彼女、有名な社長令嬢だったよ」

「え?ボクには全然そんなこと、、、」

「ほら、そういうところ。これだから新人ホストは怖いんだよね、あはは。」











ルイなら、どうしてたのかな?

別に彼女は普通の女の子だったよ?

そう、どこにでも居るような可愛い女の子。

肩書きとか、そんなモノあの頃のボクにはどうでもよかったんだ。

ただ、ボクはボクを選んでくれたヒトに感謝するだけだった。

だから、お金を沢山持ってるとかあまり持ってないとか、有名だとか無名だとか、それは問題じゃなかったんだぁ。

でもルイはよく言ってたっけ?

お金持ってない女はオレに必要ないから、どうぞ、他のホストを選びなって。

あれってルイの本心じゃないってこと、ボクは知っていたよ?

そうやって言っておきながら、ルイはいつもありがとうって自分の客に本気で感謝していたのボクは知ってるもん。

ボクらって、

別にそんなにホストの自分に拘る必要なかったんじゃないかな?

飾る必要なんてなかったんじゃないかな?

いつからだろうね?




ボクらの本当の姿を誰にも見せられなくなったのは。