「あ~。それで、恩を感じたままでは心苦しくて、置いては戻れなかったんだ。それはそれはご迷惑おかけしました。もう、大丈夫だし、これで、貸し借りもないから、今からでも戻っていいよ」

「もう終わってますって。まぁ、西尾がどうなったか、気になるっちゃあ、なりますけど」

「ねぇ、西尾くんって、美雪のことどう思ってた?」

「どうって?」

「ちょっとは好きっぽかった?」

「さぁ?そういう話はしませんからね~。まぁ、嫌いだって話もしたことないですけど」

「そっか。じゃ、ちょっとは可能性があるってことよね」

「じゃないっすかね。あ、西尾に電話してみましょうか」

「してみてっ。ダメだった時のことを思うと、美雪にはかけにくいから」

「ですよね」

2人は立ち止って、携帯電話を取り出して航に電話を掛けた。

「・・・あ、西尾?」

電話がつながって、舞と光俊は目を合わせた。

「・・・ごめんごめん。急に舞さんが調子悪くなって病院に付き添ったから」

「ん?ああ、いやいや心配しなくて大丈夫。ただの胃痙攣だから」

思わず半笑いになる光俊のミゾオチに、ムッとした顔で軽くパンチを充てる舞。

「ああ、それより、西尾がどうだったかなぁと思ってさ」

「・・・ん?あ?え?ほ~」

「何何何?」

舞が小声で光俊に詰め寄る。光俊は、携帯電話をそっと舞の耳元に寄せた。

「ん?」

思わず耳を澄ます舞。

「美雪~?」

聞こえてきたのは美雪の声だった。舞は光俊から携帯電話を受け取り、そのまま話し始めた。

「西尾くんと一緒にいるの~?」

興奮のあまり、少々声は大きくなっている。

「・・・おめでとう!良かったね~」

舞は光俊と目を合わせて頷きあった。

「詳しい話はまた今度聞くね。・・・ん?ああ~、うん、お腹の方は全然もう大丈夫。ああ、いや、別にぃ~」

だんだん小声になって、光俊から目線を逸らす舞。

「うんうん、またゆっくり話そうね。もう、切るよ。あ?ん?ああそっか。はい」

勝手に切ろうとした舞だったが美雪に言われて光俊に携帯電話を差し出した。