「・・・・・・寝てるとさすがにおとなしい」
と、光俊が呟いた瞬間、舞がパチッと目を開けた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
不意を突かれた光俊は、椅子からのけ反り落ちそうになって、バランスを失いかけたが、なんとか、持ち直し、ひっくり返らずに、元に戻った。
「・・・何やってんの?」
ベッドの中から冷静な舞の目と声。
「・・・何って・・・」
光俊の答えを待たずに、舞はハッとして、ガバッ!と、勢いよ状態を起こした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
その行動に再び驚いた光俊は、デジャブのようにひっくり返りそうになったが、再びなんとか、もちこたえた。
「何してんの?そんな遊んでないで正直に教えてよっ」
「遊んでないっすよ、舞さんが驚かすから・・・」
「ねぇ、私、このまま入院なの?やっぱり胃癌なの?」
光俊の言葉を遮って、舞が真剣な眼差しで上布団を握りしめて光俊を見つめた。
「あ、いや、それは、聞いてないっす」
「・・・は?どういうこと?隠さないで教えてよぉ」
「いや、隠すもなにもホントに何にも・・・。聞いたことって言ったら・・・」
「言ったら?」
「俺が聞いたことといえば・・・」
光俊の脳裏に先ほどの看護師の含みのある笑みが蘇る。
「いや、誤報だとは思うんっすけど・・・」
「何よ、誤報って・・・。いいのよ、気使ってくれなくても。やっぱり、癌なんだ・・・」
舞は露骨に落ち込み、頭をうなだれた。
「あ、いや、俺は、病名はなんも聞いてないっすよ」
「はっ?じゃあ、何聞いたのよ」
舞は頭をうなだれたまま、上目遣いにギロッと目線だけ光俊に向けた。
「それは、その~」
言いよどむ光俊を見ていて、不意に舞がガバッと再び頭を持ち上げた。
「おっと~っ」
さすがに3回はぐらつかなかった光俊をグッと舞が見つめた。
「平野くん、なんでここにいるのよ」
「へ?」
「美雪と西尾くんはどうなったの?」