缶コーヒーを握りしめる手に力がこもる。つまりは、気になるのである。舞の胃痛の原因が何なのか?癌なのか?余命がないのか?美雪の言う通り保険金で借金から解放されるかもしれないからなのか?とにかく今、光俊は舞の事が気になる自分を感じずにはいられないである。缶コーヒーを飲みながら待ってはいたが、飲み終わっても、舞は戻って来ない。診察室に入ってから、20分以上たったので、光俊は思い切って受付に声を掛けた。

「あの、すみません」

「はい?」

「あの、20分前ぐらいに呼ばれた京極舞さんの連れなんですけど・・・」

「ああ。京極さん、今、点滴されてますよ」

「点滴?」

「ちょっとお待ちくださいね」

受付の女性は奥に入り、再び戻ってきた。

「あの~、京極さんのご家族の方ですか?」

「いや、違います」

「彼氏さん?」

「あ、いや、違います」

「そうですか・・・」

受付の女性は少し困ったような表情を浮かべた。その顔を見て光俊は恐る恐る訪ねた。

「あの、家族じゃないと聞けないような病状なんですか?」

「あ、いえ、そういうわけじゃないんですが・・・」

と、その時、光俊の携帯が鳴った。

「あ、すみません」

ポケットから取り出してみると、それは悦子からだった。

「あ、もしもし。あ、はい。あ、ちょっと代わってもらいますね」

と、光俊は、携帯を受付の女性に差し出した。

「あの京極舞さんのお母さんからなんですけど、代わってもらえますか?」

「え?私がですか?ああ、はい」

受付の女性はとりあえず、携帯を受け取ったが、少し話すと、携帯を持ったまま再び奥に入って行きしばらくすると、すでに切れた携帯を丁寧に両手で光俊に差し出した。

「はい、お返ししますね」

「あ、はい」

「どうぞ、あちらからお入りください」

受付の女性は舞が入って行った扉の方を指さした。

「すみません」

光俊は、少し頭を下げてから言われた扉を開けた。