「ここか、屋上…」



ひんやりとしたドアのノブを握って右に回し、奥に押す。


キィィッというプラスチック特有の音を立てながら開いたドアの隙間から、ひんやりとした空気が流れ込んでくる。


その寒さに少し顔をしかめつつ、外へ出た。


閑散としたその場所にあるのは、大きな貯水タンクのみ……



かと、思いきや。



向かって右側に、見覚えのある男子生徒がいるのを発見した。


やわらかそうな茶髪に、男子にしては少し低めの背。


アイツは、もしかして……


その人物に思い当たる節があり、一歩踏み出したとき。


ジャリッ、と、足元で砂が微かな音を立てた。


やべっ……


そう思ったのも束の間。



「……歩?」



聞き覚えのある……アイツの声が、聞こえた。