「見てたのか…?」
「うん。
噂の転校生、栗原修也を見てみたくて。
案外強いんだね」
「何だよそれ。覗きなんて趣味悪ぃことしやがって」
「下心があるワケじゃないもーん」
「……そうかよ」
何故か妙に気抜けし、榊真浩を掴んでいた手を緩めた。
その行動に、首を傾げる榊真浩。
「あれ?やらないの?」
「やんねーよ。腰痛ぇし」
「あ、そっかそっか。じゃあ腰治ったらやろうね!」
……結局やるのかよ。
つか、妙に乗り気だなコイツ。
人に怪我させておいて、その態度はなんだよ。
文句でも言ってやろうかと思ったけど、このにこやかな笑みを見たらそんな気も失せた。
「あ、もう5時だー。僕帰るね。じゃあね、栗原君」
腕時計を確認した榊真浩は、俺の鞄を拾って渡してくる。
そしてニコッと笑い…そのまま、生徒玄関へと歩いて行った。
その後ろ姿を見送りながら、少しの間呆然と立ち尽くしていた俺は……
「……腰、痛ぇんだけど」
湿布をもらいに、保健室へ向かうことにした。