「2階に来れたら、蓮央か圭太が相手してくれるってよ。どうする?歩」


「…榊には、どんな伝言なんだ?」


「内容はほぼ同じだ。でもアレだな、最初の方の罵倒のセリフが少し違う」


「……ふぅん」



見かけによらず負けず嫌いなところがありそうな榊は、きっとこの申し出を受けるんだろう。


あの黒い笑顔で、また睡蓮に乗り込んで行くんだろう。




……でも、俺は。





ハサミを後ろ手に握ったまま、立ち上がった。



「あれ?歩、帰るのか?
…って、ハサミ棄ててねぇじゃねーか!!」



俺の手からハサミを奪おうとする銀髪を見下ろし、口を開く。



「……おい、銀髪」


「な、何だ!!まさかそれで俺を殺ろうとか考えてんじゃねーだろうなっ!!」



何言ってんだ、コイツは。


若干呆れながら、手の中のハサミをベッドに放り投げて、言った。



「俺さ…降りるわ」



視線をハサミに向けていた銀髪が、ゆっくりとこちらを向いた。



「……降り、る?」


「あぁ」


「降りるって……どういう、意味だよ」



その質問には答えず、黙ってドアのノブに手を掛ける。


開けようとしたところで、ドアに手をついた銀髪によって防がれた。