「マジかよ歩……それだけはやめとけ」
「あ？何でアンタに止められなきゃなんねぇんだよ」
「あそこは……やべぇ。お前が行って潰せるようなヤワな所じゃねぇ」
「何でそう言い切れるんだよ。戦ったことあんのか？」
どうせ無いに決まってる。
……そう確信して、尋ねたのに。
「…あぁ、あるよ」
予想外の返事が返ってきた。
「【睡蓮】はな、No.1を狙ってるんだ。何度も何度も【桜蘭】とやってきた。でもな…あの総長は化け物だ。蓮央ですら歯がたたねぇ」
「レオ…？」
「蓮央は、【睡蓮】の総長だ。俺と同い年」
「……ってことは、16で総長やってるってことかよ」
「【桜蘭】の総長も16だって聞いたぞ」
うわ…
たった16歳で世界規模の族まとめるとか、どんだけ強ぇんだよ。
……でも。
「だとしても、俺は【桜蘭】に入る。それ以外に選択肢はねぇ」
「歩……」
「帰るから学ラン返せ。濡れててもいい」
「…うん」
悲しげに眉を下げる榊。
……これだから、関わりたくないんだよ。
『ふざけんなよ歩……！！』
『お前のこと、親友だと思ってたけど。
誤解してたわ』
『…ぶっ殺してやる』
ズキン、と痛む頭。
くそ……思い出したくねぇのに。
「ねぇ歩…」
「じゃあな」
榊を遮って別れを言い、俺は静まり返る部屋を出た。
