───ズドンッ!!



まるで柔道で投げられたかのような音が、倉庫に響き渡った。


仰向けで倒れているのは南。


俺はさっきの場所から数歩ずれた所で未だ突っ立っている。



「は……?」



何が起こった、とでも言いたげな顔で、南は寝転んでいる。


そりゃそうだろうな。


訳も分からないまま、一瞬で投げ飛ばされたんだから。


真浩も本条も、喧嘩の手を止めて目を丸くしている。



「歩…、それって......?」


「見りゃ分かんだろ。合気道だよ」


「あ、合気道!?」



合気道は、要は相手の攻撃を跳ね返す武道。


加えられた力を上手く利用することで、こっちは全く力を入れなくても相手がすっ転んでくれるってワケだ。



「何でそんなの身に付けてんだよ…」


「親が護身術やれってうるさくてな。
合気道だけじゃねぇ、空手に少林寺拳法までやらされた」



ま、そのことは誰にも言ってねぇけど。


卑怯だ何だって言われると面倒くせーし。



「合気道、か…。予想もしなかったな」



天井を仰いだまま、南は乾いた笑いをこぼす。


面白いな、と呟いて、ゆっくり立ち上がった。



「さっきまでの攻撃は、武道を使わないって示すためのカモフラージュか?」


「誰がただの喧嘩ごときで技かけるかよ。
お前が相手の場合、衝撃を上手く逃がす必要があるから使っただけだ」



コイツの攻撃は、マトモに食らうと骨折どころじゃ済まなそうなくらいの威力がある。


さすが、総長を名乗る男だ。