「止まれ」



そんな声が聞こえたと同時に、すぐ目の前に人が現れた。


退く気配は全く無い。



「っ、やべっ!!!」



慌ててハンドルを切り、思い切りブレーキをかける。


タイヤがけたたましく音を立てる。


いきなり減速したせいか、後輪が少し浮くのを感じた。



……が、無事停車。


ゲームで何度もシュミレーションしていたおかげか、驚くほどに安全だった。


…って、今は自分の運転技術を褒めてる場合じゃない。



「てめぇ...危ねぇじゃねーかっ!!」



バイクから降りて、妨害した奴を怒鳴りつける。


黒いキャップを被ったそいつは、フンと不敵に笑った。


余裕そうなそれがまたイラついた。



「...何笑ってんだよ。つか誰だよ」



睨みながら問うと、そいつは笑ったままキャップに手をかけて、外した。


その中から露わになる、青い髪。


アイツか、と理解した俺は、拳を握りしめた。



「何かしてくるとは思ってたけどよ、まさかバイクで突っ込むとはなぁ。
さすがの俺も予想しなかった」


「蓮央…」


「はは、2度目の対面で呼び捨てかよ。
本名は南 蓮央だ」



口だけで笑って見せた南は、目線をバイクに移した。



「……にしてもよく止まったな。
それ、俺らの間では “じゃじゃ馬“ って呼ばれてる単車だぞ」


「...持ち主そっくりの性格じゃねーか」


「お、確かに言えてる」