「僕達はまだ午後の授業があるから、諒真さん先に帰ってていいよ?」


「はあぁーー!!?
俺1人でどうやって出ろっつーんだよ!」


「何とかなるでしょ、諒真さんのルックスと話術をもってすれば」


「え?あぁ、そうだな!
俺のこの巧みなナンパの話術で……って、そんなんで教頭を騙せるか!!」


「そんなの僕知らないもーん」



銀髪の方を振り返ることすらせず、榊は楽しげにスキップまで始める始末。


...あーあ、可哀想に。


銀髪が少し気の毒に思えてきた。


コイツもコイツで面倒くさそうだな……とか思いながら、屋上のドアノブに手をかけた時。



「あ、午後の授業で思い出したんだけどさ」



榊は無垢な笑顔を俺に向けながら、俺の左手首を指さした。




「今、何時?」


「……は?」



手首に巻いてあるデジタル時計に、ふと視線を移すと。


[ 14:09 ]

という数字が浮かび上がっていた。


2時...9分?



「……最悪だな」



一言呟いて、そのままドアを開き階段を降りる。


予想通り授業中らしく、階段は静かだ。



「あーあ、やっちゃった〜。
これ完全に午後の授業遅刻だね、歩」


「誰のせいだと思ってんだよ...」


「だって歩がなかなか納得してくれないから...」


「お前が長引かせるからだろ」


「ん〜。
じゃあ、ここは諒真さんのせいにしとこ!」


「……だな」


「おい!?
お前ら俺に対する当たり強くね!?」