「───それから、俺はそこを去った。
絶対に、あの野郎と過去の俺に復讐すると…泉里の墓の前で誓ってな」


「……で、ここに転校してきたってワケかぁ...」


「あぁ。
まぁ、警察とかのこともあって、転校すんのは1年半くらい後になったけど」



榊の言葉にそっけなく返す。


案外、平然と話すことが出来たな…。


泉里の存在が俺の中で霞み始めてる証拠か。



「...なぁ、歩。もしかして、さ」



重そうに口を開いた銀髪の方を見る。


そいつの視線は、俺の少し上にあった。



「...その髪、そのときの『光景』を忘れないようにするためのモンか?」


「……...」



この男がたまに発動する勘っつーのは、すげぇと思う。


まさにその通りだからだ。


そこまで言い当てられて、正直驚いた。



「……あぁ、そうだ」



これは、俺が俺自信にはめた足枷。


過去から目を背けないようにという、俺なりの暗示でもある。


この髪を見る度、あの光景を、憎しみを、怒りを……


全てを思い出せるように。



「その後、総長は捕まったの?」



榊の問いに、首を振る。



「警察には訴えたが、証拠不十分で未逮捕のままだ。
数ヶ月後にアイツも街から姿を消した。
この近くに転校したっていう噂を聞いて、俺もここに来たんだ」


「名前とかわかる?」


「知らねぇよ。最後まで言わなかったからな」


「そっか…」