俺の中にあるのは、何が起こったのか分からないという困惑と、



───認めたくないという僅かな抵抗。




「泉里...?」



少し動かすだけで激痛が走る体を引きずるようにして、最後に泉里が見えた場所を目指す。



フェンスの一角が折れている。


校舎は綺麗なのに、こっちは改装が行われていなかったようだ。


風化してボロくなったフェンスには、1枚分だけ『無い』ところがあった。



そこが……泉里が寄りかかっていた所。



……まさか、な。


そんなことはありえない。



だってさっきまで、アイツはここで戦っていたんだぞ?



なのに──...




ありえない、ありえない、と。


自分に言い聞かせながら、フェンスに手をかける。



そう。

この下にアイツがいなければいい話。


それだけのこと、だよな。


フェンスを握った手に力を込めて。


身体を前に、乗り出した。