あの泉里の蹴りが、無防備だった俺の腹に入った。
「がはっ...!!」
息が出来ない、なんてもんじゃない。
目の前が白くなるような威力だった。
内蔵すべてが押しつぶされるような激痛が走り、俺は横に吹っ飛んだ。
地面に擦れた肌が裂けて熱い。
薄く目を開けて見ると、俺が飛んできた跡が血となって残っていた。
そんな視界も、だいぶ霞む。
何だよこれ……
腹に力を入れなかったとはいえ、強すぎるだろ…。
「……あーあ、使い物になんねぇなぁ。
せっかく面白くなりそうだったのによ」
意識朦朧とする俺の頭上から、そんな声が降ってくる。
目線だけを上げると、俺が飛ばされた場所には総長が立っていたらしかった。
使い物に、ならない...?
もう、そいつの言葉の意味を考える意識すらない。
「ま、いいや。
このめんどくせぇガキは俺がやるか」
「っ、や、めろっ...!」
「無理。だって放置してたらやべぇもん、こんなおっそろしい怪物」
「アイツに、手を...出したらっ……」
「お前ら全員ぶっ殺す、ってか?その前に俺らがやられちまうっつーの。とりあえずお前は寝とけよ」
「ぐ、ゲホッ……!」
また蹴り飛ばされ、目の前に火花が飛ぶ。
ほんの軽いものだったが、失神寸前である俺には大ダメージだった。