「───歩!!」



屋上の扉が、吹っ飛ばされるような勢いで開いた。


と同時に聞こえたアイツの声。


座って空を眺めていた俺が振り向くと、案の定...いた。


肩で息をして、柄にもなく焦って。


俺のために...そんなにも急いだのか?


そんなことを思うと、胸の奥がかなり痛んだ。



「よぅ、主犯格の泉里くん」


「あぁ!?テメェ誰だよ!!」



場にそぐわない明るい声の総長を、泉里が睨みつける。


どうして自分の名前を知ってるのか、という疑問はどっかに行ってるらしい。



「ここの総長。
来てもらった分際で言うのもアレだけどさ、もう帰っていいぞ〜」


「上等だオラァ!!......って、はぁ?」


「お前にはそんなに用はないから」


「......」



一瞬目をしばたかせた泉里だったが、「あぁ」と納得すると俺の方に足を進めてきた。



「歩、何してんだ。帰るぞ」



光に照らされて煌めく色素の薄い髪。



...なぁ、泉里。

染めなくとも染めたように見えるその髪が、いつも羨ましかった。


いつか俺も、そんなふうな髪色にしてみてぇなって思ってたよ。


……なんて、今更言えるわけもないよな。