「つーかお前...その強さで弱小を名乗るとか詐欺だろ......」


「詐欺じゃねぇよ。ほら、よく言うだろ?
能ある鷹は爪を隠す、ってな」



総長は不敵にニヤリと笑い、タバコを加えて火をつける。



「お前、名前は?」


「...栗原」


「下の名前だよ、ばーか」


「歩」


「へぇ。あゆむ、か」


「そういうお前は……」



〜♪〜♪〜♪...


名前を聞こうとした時、聞き覚えのない着メロが鳴り響いた。



「あ、悪ぃ。ちょっと待て」



総長が携帯を取り出して耳に当てる。


誰かと二言三言話した後、すぐに切ってタバコをくわえなおした。



「...なぁ、歩」



フゥッと煙を空へ吐き出しながら、総長は空を仰ぐ。



「俺と、取り引きをしねぇか?」



人の形をした、悪魔の声。


俺の過去を、今を、未来を。

全てを壊すことになる、悪魔の囁きに...


俺は気付かなかった。