何も見なかったことにして帰ろうと回れ右をすると、後ろから肩をつかまれた。
「待てよ、どこ行くんだ?」
「...帰る」
「制服、すげーボロボロだけどいいのか?」
「気にしねぇよ、別に」
替えなら何着かあるし。
そう言って手を振り払おうとすると、背後に殺気を感じた。
「ッ...!!」
背筋がゾクッと震えて、思わず後ろに数歩下がると。
──ガッ!!
目の前を何かが横切り、コンクリートにぶつかった。
そのコンクリートは、パラパラと自らの破片を落としている。
今、一体...何が起こったんだ?
「…へぇ、避けれるんだ。俺の蹴り」
感心するような声。
どこか笑いを含んだそれに、また冷たい何かを感じた。
コンクリートに叩きつけたままだった足をゆっくりと離したのは...
隣にいる、茶髪の奴。