...と、1歩を踏み出した時だった。



「──おりゃああっ!!!」



デカイ声が聞こえたかと思った次の瞬間、背後で「ダンッ!!」という音がした。


俺の足まで届く振動。


反射的に振り向くと、そこには、さっきまで2階にいたはずの茶髪が立っていた。

...正確には、かがみ込んでいた。


……は?

何で、いつの間に来たんだよ、コイツ。


数秒前にはそこに──...


そこまで考えて、ハッとした。


・・・まさか。

まさかの話だけど。



「……お前、飛び降りたのか?」



茶髪が、パッと顔を上げる。


そして、照れたように笑った。



「ははっ...悪いな、着地失敗だ」


「はぁ...?お前...頭おかしいんじゃねぇの?
飛び降りるかよ、普通……」


「だってそうでもしないとお前どっかに行っちまいそうだったもん」



...まぁ、そのつもりだったが。


でもだからって、飛び降りることはないんじゃないか...?


高さだって、軽く5mはあるのに。



「下手したら死んでたぞ...」


「大丈夫だって、2階からは何度もやってるし」


「……どんな生活してんだよ」


「んー...、泥棒とか?」



馬鹿みてぇ。

こんな危険な奴と関わってられるかよ。