もう少しくらいなら...
一歩近づいた。
「それで、えっと」
「まだかなり遠いけど」
そ、そうかな?
じゃあもう一歩
「まだ遠くない?」
荒崎くんは少し笑った。
荒崎くんが笑った。
顔が少しクシャッってなって、少しだけ顔が幼くなって、えくぼができる。
可愛いな。
「愛内さん?」
荒崎くんから近づいてきた。
私の目の前で止まる。
「で、なに?」
そうだ!
「えっと、あの、その、」
ダメだ。
ちゃんと言えないよぉ。
こんなに近いし
同級生の男の子なんて話したこともないし。
「とりあえず落ち着け」
そうだ。
深呼吸だ!深呼吸!
吸って吐いて吸って吐いて
荒崎くんはククッと笑った。
「な、なんで笑うの!?」
顔が熱くなってくのがわかる。
「面白いから」
また、面白いって言われた。
「ふてくされんなよ」
「だって...」
「悪かったって」
あれれ
荒崎くんが謝ってどうするんだー!
「私こそごめんなさい!!!」
「は?」
「えっと、私のせいで学級委員やることになっちゃって、申し訳ないなって。さっきため息ついてたし...」
「別に。愛内さんのせいだなんて思ってないし。もうなったことはしょうがないし。罪悪感とか感じなくても大丈夫だから」
「本当に?」
「ああ」
「ありがとう!」
よし美嘉待たせてるし。
教室に戻ろう。
「あっ!ちょっと」
私は荒崎くんが呼んでたなんて知らずに教室に入って行った。