オロオロしてたら荒崎くんから近づいてきた。
荒崎くんの顔がすぐそこにある。
「で、どーした?」
「あの、教科書、私が持つべきだと思います!」
「は?」
「だって、教科書私の目の前にあったのに荒崎くんに持たせるわけにいかないし」
すると、荒崎くんは肩を震わせて堪えるように笑った。
「なんで、笑うの!?」
やっぱり恥ずかしい。
荒崎くんは教室だと無表情なのに私の前になるとよく笑う。
そんなに私がおかしいのかな?
「だって、普通そんなこと思わねぇよ。男が重い方をもつのは普通だし。」
そうなの?
荒崎くんが言うんだから正解なのかな。
「あ、ありがとう。」
荒崎くんはえ?って顔をして首を傾げた。
「教科書持ってくれてって、ことです。」
「だから、普通だって」
「それでも!お礼したいから」
「ふぅん」
荒崎くんはそう言ってまた歩き始めた。