その日の放課後のヒロの機嫌は最悪だった。
いつから機嫌が悪かったのかは不明。なので原因も不明。
「奈子、帰ろ」
その声色があまりにも低かったから「ご機嫌ナナメだね」って言えば「誰のせいだよ」って言われた。
私が原因?
「なにかしたっけ?」
「したと言えばしたし、いや、してないけど...ムカつくんだよ」
理不尽な怒りだ。
はぁ、と小さくため息をついて鞄を手に取った。
ふと、視線を感じて顔を上げると志賀くんがにっこりと笑って手を振った。
「城間さん帰るの?また明日ね」
「う、うん!バイバイ」
友達にバイバイを言える日が来るなんて!
ちょっと感激しながら手を振っていると、その手をガシッと掴まれた。
「遅い。帰るぞ」
「わっ!」
ぐいっと引っ張られて強制的に教室を退場させられる。