志賀くんとは息が合うのか、合わせてくれているのか、けっこうなペースで走れるようになった。
今はちょっと休憩。空いていたベンチに並んで座って、他の人の練習を眺めていた。
「お疲れ。この調子なら1位狙えそうだね」
「だね。でも難しいね。この競技、最初は一番人気だったからもっと楽なのかと思ってた」
「あぁ、ウチのクラスは特別。他のクラスでもわりと人気だけど」
「やっぱり賞金がでるの?」
競技の人気の秘密はやっぱりそれか!と思って聞いたけど、志賀くんは首を傾げた。
「賞金?」
「あ、いや!ううん、なんでもない。練習してるのって二人三脚の人くらいなんだね」
なんだ、違うのか。
他の競技の人たちはサボってるのに、二人三脚だけ熱心に練習しているからてっきりそうかと思ったのに。なんだ。じゃあなんで?
私が不思議そうなことに、また首を傾げる志賀くんはあぁ、と自分の中で何かを結論付けたらしい。
ちょっとだけ眉が下がった。
「...まぁ、あとの競技は個人競技だしね。これ、転んだら地味に恥ずかしいし」
「確かに。もうちょっと練習した方がいいかな...」
「そうだね。また時間作って練習しよう」
志賀くんは笑うと八重歯がでて、なんだか可愛かった。