幼馴染の牧広隆(マキ ヒロタカ)は家も隣で幼稚園からの腐れ縁。

中学も卒業してやっと離れられると思ってたから、入学式当日、家から出てきたヒロの制服が私の通う高校のものだったときは夢だと思いたかった。

クラスが同じだと分かったときは、思い描いたハッピー高校ライフに涙を飲んで私は別れを告げた。


それからはもう、中学のときのデジャヴ...。


成績優秀、見目麗しい幼馴染のヒロを紹介して欲しいというお願いが後を絶たず、もはや休み時間には列ができるほどで、私はヒロの窓口係に強制的に任命された。


「ヒロ、二組の鈴木さんが話がしたいらしいよ」

「面倒」

「...ヒロ、学年で2番目に可愛い木下さんが連絡先交換して欲しいんだって」

「ダルい」

「.........ヒロ、セクシーさでは学校一の三村さんが今度二人で遊びたいって言ってるけど行くよね!?行ってよ!」

「なんでだよ!お前、俺が襲われてもいいわけ!?」


結局ヒロはすべての誘いを断り、私は窓口係失格の烙印を押された。

それと同時に「城間(シロマ)さんは幼馴染の立場を利用して牧くんに他の女と遊ばないでと泣きついている」とか「牧くんを独り占めしたいから紹介はしない」とか「連絡先を書いた手紙を破っている」なんていう噂が流れ始めた。


ヒロに相手にされなかった怒りの矛先が私に向くのは、当然というか、うん。予想した通りだった。