「おはよう」
「お、おおはよう」
志賀くんが私に声をかけたことになのか、私が挨拶をしたことになのかは分からないが、この一連のやり取りに、教室の空気が張り詰めたものに変化した。
私がどもったからですか!?えぇ、えぇ、私だってもっとさらりと挨拶する予定だったんですよ。
波風立てない友達づくりの基本には挨拶は欠かせないもん。練習だってしたのに。
まさか志賀くんから挨拶されると思ってなかったから焦ったんですよ。何か文句が?
さっきまでガヤガヤペチャクチャしていた教室がしん、と静まり返っているのに戸惑いも見せずに志賀くんは言った。
「明日の放課後、時間ある?二人三脚の練習しない?隣のクラスの友達もするらしくて、一緒にどうって言われたんだけど」
「分かった。うん、明日ね」
「良かった。じゃ、そういうことで。あ、牧もおはよう」
「.........はよ」
ヒロの挨拶は昨日の不機嫌さを引きずっていた。