それで私は、どうして呼ばれて、何を責められているのだろうか。
状況が理解できてくると、私はますます冷めてきた。

夫が、交通事故のペナルティーで出世が遅れる。
仕方ないじゃない。
本人の不注意が問題なんだから。

……もっと言えば、最初から職場の近くに住んでれば防げた事故だ。。
いずれにしても、私が責められるのは不条理じゃないか。

「その目!私には関係ないとでも言いたそうね!あなたのそういう態度に、栄一や私達がどれだけ傷ついてるか、まだわからないの!?」
姑はそう言って、私を指差した。

……わかりません。
少なくとも、姑は傷ついてるのではなく、怒ってるようにしか見えない。

夫は、どうなのだろう?
わからない。
……そもそも、今、こうして夫が、うちではなく実家に帰ってる意味もわからない。

私は、感情的な姑を無視して、舅に向かって手をついた。
「私が至らないばかりに、ご不興を蒙らせてしまって、申し訳ありません。」
それ以上に言う言葉も浮かばない。

舅は、姑の顔色を見て困っていた。
……結局、今まで積もりに積もった姑の私に対する不満がこういう形になったのだろう。
そんなのに、つきあってられない。

「明日も早いので、今夜は帰ります。栄一さん、夕食できてますけど。今日はこちらにお泊まりですか?」
さっさと立ち上がって、夫の意向を確認した。

「いや、そういうわけでは。では、私も帰ります。」
夫は、あたふたと付いて来た。
……姑が何か喚いてるようだったが、振り向くのも足を止めるのも嫌だった。

帰宅後、すぐに夕食を温め直して食べた。
何か言いたそうな夫と目を合わすこともなく、無言で食べ続けた。

「……すみませんでした。母が、激昂してしまって。あなたに嫌な想いをさせてしまって。」
食後、申し訳なさそうにそう言った夫に、イラついた。

「栄一さんも、私に不満があったということでしょう?ちゃんとおっしゃってくださらないとわからないわ。」

夫は、悲しそうにうなずいた。
「本当に、そうですね。私は、事故そのものに対するショックよりも、もはや将補以上に到達できないという結果に打ちのめされたのだということを、夏子さんに説明できなかった。それで、つい、実家で愚痴ってしまいました。すみません。」
つい……ね。

「お義母さまは、私に対してだいぶ怒ってらっしゃるようですが、私は何か、お気に障ることをしてしまったのかしら。栄一さん、ご存じでしたら教えてください。改めます。」
今さらだろうと思いながらも、しおらしくそう言ってみた。
すると夫は、ためらいがちに言った。

「……私が夏子さんを大事にし過ぎる、と、不愉快なようです。実家で食事せず、夏子さんのお料理を楽しみに帰宅するのも。」

「はあ……。でも、それじゃ、結婚前から?ずっと苦々しく見てらしたってことですか。」

夫は、申し訳なさそうにうなずいた。