でも、郡さんは、足繁く神戸に来て、私の気持ちがなびくのを待った。
……ある夜、章さんに全く振り向いてもらえなくて、自棄酒(やけざけ)に酔った勢いで、郡さんに「甘えたい」と言った……スカイプで。

すると、次の休日には郡さんがご両親と共に挨拶にやってきて、あっという間に結納が執り行われてしまった。

「これからは存分に甘えてください。」

郡さんはそう言い置いて横浜に帰って行ったけれど……2年もの間、付き合っているとは言いながらも手もつないだことのないヒトに、何をどう甘えられると言うのだろう。

結局、ぎこちないまま、こうして結婚してしまった。



「……朝食の前にしますか?後にしますか?」
不意に夫が頭上からそう言った。

「え?何を?」
チェックアウト?

驚いてそう聞くと、夫は目をそらして赤くなった。
「……共に、入りたいのでしょう?」

あ!お風呂!……そうね、そうでした。
「えーと、じゃあ、朝食前に。今。」

私の言葉を聞いて、夫は無言でうなずくと、私の手をポンポンと叩いて自分から離れさせて、せっかく着た服を脱ぎだした。

裸になった夫は、私のバスローブの紐を解き、肩から滑り落とさせてから、私を抱き上げた。
「……新居に入る時も、こうしてお姫さま抱っこしてくださいね。」
夫の首に両手を回して、甘えるようにそう言った。

すると夫は至極真面目な顔で言った。
「ダメですよ。近所のヒトに見られたら大変です。」
……新婚さんだしいいでしょ、別に。

「古代ローマからの慣習なのに。」
淋しくそう言うと、夫は苦笑した。
「ここは日本ですよ。」


お風呂場に行くと、夫は慌ててロールカーテンを下ろした。
「お庭が見えない。」
バスタブに腰掛けてそう文句を言うと、夫は眉をひそめた。

「誰かに見られてしまいますよ。」
「大丈夫。下半分だけでも上げて。」
やれやれ、と夫は4分の1ほどだけ上げてくれた。

「洗ってあげる。」
そう言って、夫の背後に回って、ボディーソープを塗った。

「夏子さん……そんな……いけません!」
夫が身をよじって私から離れた。
……別にそんな際どいところに触れるつもりもないし、背中をさすっただけなのだけど。

慌てまくってる夫は欲情したらしく、逆に私を抱きしめた。
「あなたってひとは、いつも私を衝動的にさせてしまうのですね……」

そう言って、夫ははじめて、マウストゥーマウスのキスをした。
不器用でぎこちない舌を受け入れながら、今、目にしたモノに愕然とした。
夫となったヒトの男性性器は興奮状態でも小さく短く、皮をかぶっていた。

そっか……。
それで、夕べ、ああいう感じで終わっちゃったのね。

……えーと、私の膣が緩い、とかじゃないよね?
何だかすごく心配になる。

と、同時に、章さんが開発したと威張っていた膣奥の性感帯には絶対に届かないと確信した。

章さん、意味なかったよ~~~。