きらからの電話で目覚めた。笑みがこぼれる俺。泣きたいくらいに、幸せだった。けどそれは、これからの俺の人生を知らないからできた顔だった。

 「ゆうり。なによ?電話しただろ?ふふっ」
「なーに笑ってんだよ?きら」
こんな口を利けるのは、きらしかいない。
「で、なに?」
「ああ。別になんにも。」
「したいんでしょ?」
「何言ってんだよ?
…したいけど。。」
「ふふっ」
「笑うな!」
きらは黙った。俺はきつかったかな、と反省で、いや、それだけじゃないかも。顔が赤くなった。
「今、ゆうり反省したでしょ?」
「してねーし」
「ばーーか。私はなんでもあんたのこと、お見通しなのよ?」
「ばーーか。」
「あっ。ひっひどい!女の子に向かってばかって!」
「もう、その手には乗らんぞ。」
「ふふっ。わたし、ゆうり、好きや」
「俺もだよ?出会った時から」
「じゃあ、会いに行っていい?」

 きらが家に来た。
「斉藤ってやつがいてさー。俺にかまってくるんだけど、まじ迷惑っつうかさー」
「へー。ゆうりさー、斉藤って呼んでないだろ?」
「呼んでるよ!」
「そーお?ゆうりは私以外、呼び捨てに出来ないと見た。そうじゃないとジェラシー」
「なに言ってんだよ?
きらー。」
俺は、きらの上にまたがった。きらを舐めた。唇をあわせた。
きらが泣いて、びっくりした。ちょっとはこういうこと知ってたけど、やったのは初めてだった。

 そのまま、学校へ行った。
「ゆうりー」
「なんですかー?斉藤くん?」
「ゆうり」
「何だよ?斉藤?」
煩わしい、こいつ。もう、呼び捨てでいい。
「なあ、ゆうり。慧ってよべよ?」
「お前、名前慧だっけ?」
「そうだよ。」
「そっか」
沈黙。

 小説、痛み。「慧という、男が現れた。そいつは、俺がいた、暗い穴に、手を差し伸べた。俺は、煩わしかったけど、面倒くさいからその手を受け取った。」

 「ゆうり」
「慧」
「お前、細いな」
「お前も細いな」
「そっか。同じだな」
「ああ。」
俺はだからなに?と思った。
「抱きしめたい」
「お前、ホモか?」
「そうだよ」
「うん。」
「驚かないの?」
「うん。」
俺は、お前とは無理、とは言い出せなかった。