「ダメ!」

 あ、ってなったけど、望亜は咲ちゃんをベチンって叩いちゃった。

 咲ちゃんはびっくりして、おっきな口を開けて泣いちゃった。

「望亜ちゃん、叩いちゃダメだよ」

「ダメなの!さきちゃんばっかりやぁだ!!」

「悪い子は抱っこしません」

「あ~!ねぇね!!」

 咲ちゃん抱っこして、立ったねーねの足にしがみついて望亜までおっきな口開けて泣き出した。

 でも、ねーねは望亜を見ないで咲ちゃんばっかり見てる。

 望亜もお姉ちゃんなのに、咲ちゃんは赤ちゃんだからしょうがないのに。

 なのに、なんで望亜も泣いてるの?
 なんで赤ちゃんみたいに泣いてるの?

 ぼくも、泣いていいの?

「…っふえ…うわぁぁあああん!」

「えぇ!?ともくん!!?」

「よも、どうしたの?」

 いっぱいいっぱい泣いた。

 黒いもやもやが消えてくれるようにいっぱい泣いた。

 なのに、黒いもやもやは消えなくて、さっきよりずっと黒くなったんだ。