「俺は、よもぎちゃんをいじめたことなんて…」
「なかったとしても、止めなかっただろ。同罪だ」
容赦のない言葉に何も言い返せなくなる。
気付いていなかったわけじゃなかった。
よもぎちゃんの制服が少し埃っぽくなっていたのも、いつも何かに耐えるような顔をしていたことも、いつも1人で泣いていたことも…。
どこかでいじめられているのは分かっていた。
でも、だからといって何をするわけでもなくて、友達でもなかった女の子を助けようと思うほど、俺はいい奴なんかじゃなくて。
利用しただけだ。俺が嵐鬼に入るために、よもぎちゃんを利用したんだ。
嵐鬼をかかわりを持ったよもぎちゃんに近づけば、絶対にここに来れると思っていたから…。
「…確かに俺は、よもぎちゃんのいじめのこと、知ってました。…知ってて、見ないふりをしました。…でも」
後には引けない。あの人のもとから逃げ出すためにここに来たんだから。
「俺は、嵐鬼に入りたい。あいつに…一泡ふかしてやりたい。…だから、お願いします!!俺を、嵐鬼に入れてください!!」
静まり返る部屋。朔夜さんは何も言わない。
許してくれるまで頭だって上げない。
痛いくらいの沈黙が突き刺さっても、その場で頭を下げ続けた。