「蓬は、俺たちのせいで誘拐された」
「…え?」
「嵐鬼の内部情報を持つ、か弱い女の子だ。狙われないはずがなかった。だからこそ、なるべく目の届く範囲に置いた。…蓬が攫われた日、その目が外れた。どうしてかわかるか」
蓬ちゃんがつい最近まで休んでいた理由。
まさか、嵐鬼がらみだったなんて…。
何も言えないでいると、朔夜さんは鋭く俺を睨みつけてきて、口を開いた。
「学校で、俺たちといることが原因でいじめが起きたからだ。あいつは、誰にも何も言わず、ずっと苦しんできた。毎日のように会っていた俺たちはそれに気づけなかった」
自分を責める気持ちと、俺がよもぎちゃんのクラスメイトであることに対しての気持ちが、複雑に絡んでいるのが嫌というほど伝わってきた。
よもぎちゃんのいじめに加担したかもしれない俺を、嵐鬼に入れる。
それが、朔夜さんの中で大きな障害になっているのが分かった。